- アルコールは肝臓で分解されるが、その際にエネルギー源としてたんぱく質が消費される
- アルコールは胃腸にダメージを与えるため、過度の飲酒によって食欲減退や消化不良が引き起こされる
- 飲酒しながらたくさん食べて体重を増やすのは難しい
- 体重を増やすためには、お酒を減らすかきっぱりやめる必要がある
お酒を日常的に飲み過ぎると、胃腸へのダメージとなり、下痢や便秘を繰り返すようになります。
そんな状態が長く続くと、食べてもしっかりと栄養を吸収できないようになり痩せてしまう一因となるでしょう。
「ビール腹」という言葉は、中年以降の男性がビールを飲み過ぎることで内臓脂肪がたっぷりと蓄えられ、まるで樽のようにお腹が飛び出した体型のことを指します。
こんな言葉があるように、何となく「お酒の飲み過ぎは太る」という先入観を持っている方も多いかもしれません。
ですが、実際のことろお酒を飲み過ぎると健康を害し、太るどころか痩せてしまうケースもたくさんあります。
確かに大酒飲みの多量飲酒者やアルコール依存症の患者は、太っているよりも病的に痩せているイメージがありますね。
お酒を飲むと胃腸を壊してしまう理由と、お酒を飲みつつもしっかりと太れる方法を紹介します。
お酒はすべての消化器官に悪影響を及ぼす
ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、バーボン、梅酒、ウォッカ、ワインなどなど、世の中にはいろんなお酒がありますが、そのすべてにおいて、適量を守らないと健康に悪影響を及ぼします。
「酒は百薬の長」
「適量の酒は健康に良い」
こういった酒にまつわる話は、最新の研究で全否定されています。
お酒を適量飲んでいたとしても、まったく飲まない人とくらべて健康になることは一切なく、むしろ健康への悪影響の方が強い。
海外や国内の多くの研究が、その事実を検証し、確
認しています。
お酒は適量をたしなむ程度なら健康に害はありませんが、飲まない人よりも健康になるわけではないのです。
適度な飲酒に寿命延長効果はなく、飲酒しない人と寿命に違いはない――「酒は百薬の長」を否定する研究結果が、カナダのヴィクトリア大学と、豪州国立薬物調査研究所の共同研究チームによって発表された。
中略
(87件のアルコールに関する研究論文を検証した結果)一般的に「適度な飲酒(アルコール量で1日1.3~24.9グラム)」とされるレベルの人と、まったく飲酒をしない人を比較しても、死亡率の有意な減少は確認できなかった。
研究者らは、飲酒が動脈硬化症や冠動脈疾患など、一部の疾患リスク低下と関係があることは認めつつ、「飲酒によってリスクが上昇する疾患で、結果的にアルコールの健康効果とされるものは相殺されているのだろう」とコメントしている。
たとえ少量でも、飲酒によって胃腸にダメージを受ける。
その結果として、低体重、つまり痩せすぎ体型になってしまう危険性があります。
痩せてしまうと、些細なことで骨折したり、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、肌のシミ・シワや薄毛・抜け毛の原因になったりもします。
でも、「お酒を飲むと太る」という話も聞いたことがありますよね。
その考え方は半分正解です。
お酒の摂取量がある程度の範囲内であれば、飲酒量と体重は正比例の関係になります。
飲酒量が多ければ多いほど、太り気味の傾向になるんですね。
お酒そのもののカロリーもありますが、酒飲みの多くは”つまみ”をたくさん食べますし、シメの炭水化物も太る原因となります。
そういった意味で「お酒の飲み過ぎは太る」というのはある程度当たっているといえるでしょう。
ただし飲酒量がある一定を超えると、逆に体重は低下していきます。
そのため、重度のアルコール依存症の患者は痩せている方が多いです。
アルコールによって痩せてしまう原因を、もう少しだけ詳しく紹介します。
アルコールが消化器官に及ぼす影響
アルコールは内臓や消化器官に様々な悪影響を及ぼします。
特にダイレクトに刺激を受ける胃や腸は、アルコールの悪影響を受けやすい臓器と言えるでしょう。
その具体的な症状を紹介します。
アルコールが小腸や大腸に及ぼす影響
アルコールを摂取しすぎると小腸にかなりの刺激となり、その結果下痢になりやすくなります。
お酒を飲み過ぎると小腸での糖質や脂質、たんぱく質の消化吸収能力が低下し、同時に大腸での水分の吸収能力も低下します。
アルコールの悪影響で、小腸でうまく食べ物が消化できなくなると、消化されなかったのものがそのまま大腸に流れ込むことに!
これが下痢の一因となります。
また、大腸で水分を吸収できなくなると、便が柔らかいままに排出されてしまいます。
これも下痢の原因。
せっかく食べ物を食べても栄養吸収されることなく下痢として排出されてしまえば、当然のことながら痩せてしまう原因になります。
症状がひどくなると、消化器官でしっかりとたんぱく質や脂肪分が吸収されず、そのまま便となって排出されてしまいます。
これを脂肪便と呼び、白っぽくて水に浮く特徴を持っています。
自分の便が脂肪便っぽくなっていたら、とくにお酒に注意が必要ですね。
また繰り返す下痢は、腸内細菌の影響も考えられます。
腸内細菌がアルコールを分解すると、その時にガスが発生します。そのため、ガスで腸が膨らみ動きが活性化します。そうなると、大腸で水分を吸収する時間が短くなり、すぐに下痢として排出されてしまうのです。
胃痛や消化不良
お酒の飲み過ぎは胃痛や消化不良の原因になるばかりか、逆流性食道炎や急性胃炎のリスクを上げてしまいます。
アルコールで胃が強く刺激されることで、胃酸と胃粘液のバランスが崩れてしまうからです。
胃のぜんどう運動も低下し、胃粘膜も荒れてしまいます。
酷くなると空腹時の激しい胃痛や胸やけ、吐き気、といった症状があらわれます。
もちろん、消化吸収能力も低下しますし、食欲もなくなっていくでしょう。
特に空きっ腹にいきなりお酒を飲むと、胃へのダメージが強くなります。
お酒が大好きで大量に飲む人ほど、ほとんど何も食べずにず~っと飲み続ける傾向にあります。
少しくらい何かを胃に入れれば、それによって胃が保護される場合もありまが、空きっ腹にアルコールは胃壁への直接的なダメージとなり、悪影響も大きくなるでしょう。
お酒を飲む前は、つまみなど何か少しでも食べ物を食べてからの方がいいですね。
オススメは油分が豊富に含まれた食べ物。
サラダのドレッシングやフライドポテトなんかの脂っこい食べ物ですね。脂質は消化吸収に時間がかかるので、アルコールの吸収も緩やかになると考えられています。
下痢を引き起こす多量の飲酒が肝臓に及ぼす影響
先ほど「アルコールの吸収を穏やかにするために脂質を食べるのが大切」と紹介しましたが、食べ過ぎは禁物です。
お酒をたくさん飲むと、肝臓に負担をかけますし、体内のたんぱく質も消費します。
肝臓でアルコールを分解する際に、そのエネルギー源として体内のたんぱく質が消費されるのです。
また肝臓には、脂質の消化吸収をサポートする胆汁を作り出す働きもあります。
もし飲酒習慣で肝臓の機能が低下していて、胆汁の量が減っていたとしたら…
食べた脂質をうまく消化することができず、そのまま下痢となって排出されてしまうことになるでしょう。
もし肝臓の機能が衰えているという自覚があるのなら、たんぱく質をしっかりと摂取する、そうして下痢を防ぐために脂っこい食べ物を控えるのが大切ですね。
お酒の飲み過ぎによる食欲不振の原因
アルコールは肝臓で代謝され手、無害な水と酢酸になり体外に排出されます。
つまりお酒は飲めば飲むほどに肝臓が頑張って働くので、負担をかけてしまうことになるのです。
そのため、長年大量飲酒を続けていると肝硬変などの疾患リスクが上がってしまいます。
「そんな、肝硬変になるほど飲んでないよ。数値だってそんな以上ないし…」
なんて思っても注意が必要です。
肝硬変とまではいかなくても、お酒は肝臓の機能を低下させてしまいます。
その結果、吐き気、倦怠感、食欲不振などの症状があらわれることもあります。
このように、お酒を飲むことは消化器官に多大な悪影響を与える可能性があります。
特に日本人は体質的にアルコールの分解能力が低い人が多く、その悪影響も白人や黒人より受けやすいといわれています。
お酒は”健康的な食生活”を破壊する理由
飲酒が胃、小腸、大腸、肝臓などの内臓にダメージを与えることがわかりましたが、最も深刻なのはそれによる”食生活の破壊”です。
食欲不振になるほど飲む人は、お酒を飲むことが第一で、普段の食生活を疎かにする傾向にあります。
炭水化物、脂肪、たんぱく質をバランスよく食べる、なんてこと考えたこともない。
野菜や果物なんて何週間も食べてない。
それでいて栄養の不十分なおつまみ系の食事でお腹を満たしたり、お金をお酒に使うので安いインスタント食品しか食べない、そんな荒れた食生活。
これじゃあ、どれだけ食べたって痩せるに決まっています。
人間はただカロリーを摂取すれば体重が維持できるわけではありません。
思い当たるのなら、まずはお酒の量を減らし、しっかりとした食事をするのを心がけましょう。
下痢や食欲不振を改善するための飲酒のポイント
「お酒」という飲み物は、世界中のあらゆる文化圏に存在し、太古の昔から現代にいたるまで嗜好品として重宝されてきました。
それはお酒という飲み物が、私たち人間に素晴らしい恩恵をもたらしてくれたからにほかなりません。
アルコールは「食前酒」という習慣があるように、適量であれば消化器官を刺激し、胃腸の働きを活性化させることもあります。
消化酵素が増えたり、消化機能の向上や食欲増進効果を得ることもできます。
適度の気分が良くなるので、人間関係を円滑にするメリットもありますし、幸せな気分にさせてもくれます。
ただし、それはあくまでも適量。
アルコールの飲み過ぎは消化器官にダメージを与え、胃食道逆流症・マロリーワイス症候群・急性胃粘膜病変・胃炎・下痢・吸収障害などの発病リスクを上昇させます。
継続的な大量飲酒は、ず~っと消化器官にダメージを与え続けることにもなり、食道癌・咽頭癌・喉頭癌・大腸癌などのリスクを上昇させてしまいます。
慢性的な倦怠感と食欲不振で体力が低下し、ガリガリの痩せ体型になってしまう原因にもなり得ます。
大酒飲みで痩せているとしたら、健康に太るためにはまずお酒をやめるか量を減らす必要があるでしょう。
ウコンを飲もうが、しじみ汁を飲もうが、どんなサプリメントを飲もうが、正直のところまったく意味はありません。
お酒を控える意外に選択肢はないのです。
また、お酒の量も重要ですが、アルコール度数も気をつけなければなりません。
アルコール度数の高すぎるお酒は、その体内での反応も激しくなります。ビールだけなら大丈夫でも、ウィスキーやウォッカを飲んだ後には下痢になっちゃう、そんなケースもあります。
アルコール度数の高すぎるお酒は、量を減らしたり、水割りやソーダ割で楽しむのが胃腸に優しい飲み方です。
- 1週間に2~3日休肝日を作る。
- 1日に飲む量を1合以内にする。
- 付き合いで飲む回数を減らす。
- 前後不覚になるほど飲み過ぎない。
- アルコール度数の高すぎるお酒は控える
このような工夫をして普段からお酒の量を控えるのが、健康的に太るためにとても大切ですね。
そしてもうひとつとても大切なこと。
それは何かを食べながらお酒を飲むってこと。
先ほども説明した通り、お酒が大好きで痩せているタイプは「つまみを食べずにただひたすらお酒だけを飲む」そんな”お酒と待っ正面から向き合う”飲み方をしています。
これはもう、アルコール依存症になる人あるあるといっていいでしょう。
何も食べないでアルコールを摂取するのは、相乗以上に内臓にダメージを与えています。
脂っこいものがオススメですが、とにかく何でもいいので何か固形物を食べながら飲むようにすれば、少しは胃腸の負担を減らすことができるでしょう。
①お酒の量を減らす
②何かを食べながら飲む
飲酒で下痢をしたり痩せないためには、これらを心がけるのが大切です。
そうしてもし、酷い下痢や消化不良が続くようなら、しっかりと消化器系内科を受診して専門医に診てもらいましょう。