痩せすぎ体型の女性は妊娠や出産に関して言えば、かなりのリスクを抱えているといっていいでしょう。
体脂肪が少ないと、そもそも妊娠しにくくなりますし、出産したとしても赤ちゃんの体重が少なくなりがちだからです。
痩せすぎの母親から生まれたこどもは、その生涯に渡って深刻な悪影響を受ける可能性があります。
「痩せすぎ」は自分だけの問題ではなく、子どもや孫にまで影響を与えてしまうんですね。
痩せすぎ体型の危険な理由と改善方法を紹介します。
痩せすぎ体型の女性が妊娠しづらい理由
女性は女性ホルモンの影響で、男性に比べて皮下脂肪が付きやすいという特徴を持っています。(男性は男性ホルモンの影響で筋肉が付きやすいです)
そんな脂肪細胞は、実は女性ホルモンのエストロゲンを作り出す役割も持っています。
痩せすぎの女性は女性ホルモンの分泌が減少してしまい、女性らしい丸みを帯びた体型を維持できなくなります。
そればかりか女性ホルモンの減少が進むと卵巣機能や脳内の間脳下垂体系の働きが低下し、月経不順や無月経症を引き起こしてしまう可能性もあります。
重度の月経不順や無月経が続くと、卵巣機能が低下したままに。
もちろん、妊娠する力も低下します。
妊活中の女性はダイエットをしない方がいいですし、もし痩せすぎ体型であるのなら少しずつ体重を増やす努力をした方がいいでしょう。
☆自分が「痩せすぎ」か判断する方法はこちら→痩せすぎによる「危険体重」の目安とは?その計算方法や一覧表を紹介
過度のダイエットで体脂肪率が低下する→卵巣機能が低下する→エストロゲン分泌が低下する→月経トラブル・赴任・骨粗しょう症のリスクが上がる
痩せすぎ体型の新生児への影響
先ほども申し上げた通り、痩せすぎ体型の女性はエストロゲンの分泌が低下していて、卵巣機能も低下しています。
その影響もあり、痩せすぎ女性が妊娠すると、赤ちゃんの在胎日数が短くなるといわれています。
その結果、生まれてくる赤ちゃんの体重も、標準体重の母親の申新生児に比べて低くなりがち。
近年、低出生体重児の割合は、増加傾向にあります。
その背景には、若い女性の過剰なダイエット志向があるといわれています。
痩せすぎ体型の母親から生まれた低出生体重児は、たとえ健康に育ったとしても、成人後に糖尿病や高血圧、脳梗塞やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病リスクが高くなるという報告もあります。
これを専門用語でDOHaDと呼びます。
生活習慣病胎児期発症起源説(Developmental Origins of Health and Disease)の略称です。
DOHaDとは、生涯における生涯における生活習慣のリスクは、受精から胎児期、出生後の栄養状態などの影響を受けるという考え方。
2,500g以下の体重で生まれた新生児でリスクが高まる疾患
- メタボリックシンドローム
- 骨粗しょう症
- 神経発達障害
- 高血圧・心臓循環器疾患
- 糖尿病
- 低身長
痩せすぎは自分だけでなく子供の世代まで悪影響を及ぼすことになるんですね。
それを証明するような調査結果があるので紹介します。
時代は第二次世界大戦末期。
ナチスドイツの支配下にあるオランダでは食糧不足で、国民全員が満足に食事できずに痩せ細っていました。
食糧難の状態は戦争末期の間、半年間以上継続しました。
こんな状況下でも、人間はタフなのもで、約4万人の赤ちゃんが生まれたのです。
「痩せすぎはこどもに悪影響を与えるのか?」
この研究テーマに、当時のオランダの状況はうってつけでした。
なぜなら、当時生まれた赤ん坊の母親は、食糧難からほぼ全員が痩せすぎの状態だったからです。
研究者は痩せすぎの母親から生まれた赤ちゃんの”その後”を詳細に調べました。
その研究結果、驚くべき事実が判明しました。
痩せすぎの母親から生まれた赤ちゃんは、低体重で生まれたにもかかわらず、大人になってから高確率で太っていたのです。
太っている以外にも、高血圧や糖尿病などのあらゆる成人病のリスクも高い状態でした。
さらに驚くべきは、その彼らの子ども、つまり痩せすぎの母親の孫の世代まで悪影響は続いていたのです。
痩せすぎであることは、免疫力の低下、精神的に不安定になる、体力が低下する、そんないろんな弊害がありますが、それだけではすみません。
子どもや孫にまで、何らかの悪影響が続いていくんですね。
下半身が太っている女性から生まれた子どもは賢くなる
ピッツバーグ大学の研究によると、下半身にしっかり皮下脂肪がついている”小太り女性”の方が賢い子どもが生まれるとか。
これは「ホンマでっか!TV」で生物学の池田先生が紹介した説。
生まれたばかりの赤ちゃんは脳も小さく、その発達にはDHAがとても大切。
赤ちゃんはDHAの80%を母親の母乳から摂取するのですが、母親の体内でDHAを蓄えているのが”腰回りの脂肪”とのこと。
赤ちゃんに授乳すると、腰回りの脂肪細胞からDHAが溶け出し、血液を介して母乳に含まれ、それが赤ちゃんの脳の発育を促すようです。
赤ちゃんに母乳を上げ続ける母親は、たったの1か月で500gも脂肪が減少するのだとか。
妊娠前も妊娠中も授乳中も、少しカロリーオーバーするくらいの食事量を心がけ、脂肪を蓄えておいた方が良さそうですね。
特にDHAが豊富な青魚を積極的に食べれば、たとえ腰回りの脂肪細胞が少なくても母乳に含まれるDHAの量が多くなるかもしれません。
妊娠前からバランスの良い食事を
栄養不足で痩せすぎの母親から生まれた子どもは、さまざまな健康面のリスクが上昇してしまうことがわかりました。
しっかりとカロリーを摂取すること、そして食事の栄養バランスはとても大切なんですね。
妊娠前の体格が「低体重(やせ)」であった女性で、妊娠中の体重増加が7キロ未満の場合、低出生体重児のリスクが凄く高くなることがわかっています。
健康な赤ちゃんを産むために、厚生労働省は痩せすぎ女性に対して、妊娠前からバランスのよい食事をすることを注意喚起しています。
主食は毎食欠かさず、主菜、副菜ともに適宜。ごはん、パン、麺などを組み合わせる。
主菜は主食に対して偏重しないようにし、魚、大豆製品などを使った料理も取り入れるようにする。
副菜は日頃の食生活で不足しがちなので、できるだけ意識的に十分な摂取(毎食1~2皿)を心がける。
厚生労働省「妊婦のための食生活指針について」より参照
太りにくい体質では、バランスの良い食事をしていても、なかなか脂肪が付きづらいかもしれません。
ですが、毎日欠かさずに主食と主菜と副菜を組み合わせて食べることが大切。
そうすれば、痩せすぎ体型を改善したり、健康的な体型を維持できるでしょう。
どうしても太れない場合は、消化機能が低下している可能性もあるので、消化吸収の良い食べ物を中心に、太るサプリメントなどの栄養補助食品を上手に使うのもいいのでしょう。
妊娠前の食生活も大切ですが、妊娠後の食生活も大切。
お腹の中に胎児がいるので、その分多くエネルギーを摂取する必要があります。
ただし、あくまでもバランスが大切。
妊娠中の葉酸不足は神経管閉鎖障害の発症リスクを上げてしまいますが、ビタミンAの過剰摂取は催奇形性のリスクを上げてしまいます。
また、出産後の授乳期にもいつもより多く食べる必要があります。
こちらが妊娠中、授乳中に「余分に摂取するべきカロリー」の目安です。
妊娠初期(16週未満):+50kcal
妊娠中記(16~28週未満):+250kcal
妊娠後期(28週以降):+500kcal
授乳期:+450kcal
妊娠後期や授乳期は、いつもの食事に加えてご飯2膳分以上のカロリーを摂取する必要があるんですね。
けっこうしんどいかもしれませんが、健康な子どもを育てるにはとても大切なことです。
妊娠を考えている女性も、妊娠中の女性も、授乳中の女性も、脂肪細胞を増やすことはとても大切です。
バランスの良い食事を心がけ、いつもより少し多めに食べることで、少しずつ体重を増やしてみましょう。
*食事を増やすのが辛いという方は「太るためのサプリメント」を上手に活用しましょう。